こんにちは、ただほんです。
今日は、『方舟(はこぶね)』で話題の夕木春央さんのデビュー作「絞首商會(こうしゅしょうかい)」を紹介します!
絞首商會 夕木春央著
『方舟』が話題沸騰!
「週刊文春ミステリーベスト10国内部門」第1位
「このミステリーがすごい!」第4位
ホンモノ作家のデビュー作 第60回メフィスト賞受賞!
帯より
大正時代の東京。秘密結社「絞首商會」との関わりが囁かれる血液学研究の大家・村山博士が刺殺された。不可解な事件に捜査は難航。そんな時、遺族が解決を依頼したのは、以前村山邸に盗みに入った元泥棒だった。気鋭のミステリ作家が描いた分厚い世界と緻密なロジック。
第60回メフィスト賞受賞のデビュー作。
本誌裏より
あらすじ&メインキャラ
メインの登場人物で探偵役をするのが、元泥棒の蓮野(はすの)という青年です。
友人である画家の井口(ワトソン的な人物)に言わせると、
「蓮野ほどに美しい人間を見たことがない」「民族的な特徴が見当たらない無国籍の顏」「無機的な美しさ」「彫刻や絵画に写し取ってみても、きっと元の姿以上には美しくはならない」
これが蓮野青年の姿です。
ただ、「大変な人間嫌い」。
帝大法科大学を出て、銀行で勤めたが5ヶ月で忍耐が尽きて辞めた。その後、泥棒になり逮捕。
「いっそ探偵はどうだ?」と勧める井口に「そんな無責任な仕事はできない」と言う。
探偵は無責任で、泥棒は責任ある仕事である。
なぜなら、探偵は急にやってきて、「これが真実です!」などと言って、後は警察や裁判所に任せる。
推理が間違っていても責任は取らない。
その点、泥棒は「失敗したら牢屋に入らなきゃいけない」。確かに!
そんな彼(蓮野)が探偵を頼まれるのです。
事件は、彼が前に泥棒に入った村山邸で起こっていました。その家の村山鼓堂博士が殺されたのです。
誰が殺したか分からず、その背後には秘密結社の「絞首商會」が関わっているかもしれない。
容疑者は4人!?
・探偵を頼んできたのが、水上淑子(みなかみとしこ)婦人。村山邸を作った故・村山梶太郎が叔父であり40代。
・生島(いくしま)。妻に内緒で夜中に遊びまくり借金まみれ。
・白城(しらき)。会社のお金を着服している。
・宇津木(うつき)。殺された村山鼓堂博士の妹と結婚している。(宇津木の妻・静子は村山邸に住んでいる書生・宮尾と不倫関係であった。)
この4人の中に犯人がいます。それぞれのアリバイや動機などが次第に明らかになっていき、色々入り乱れていきます。
主人公・蓮野は、いやいやながらも事件を紐解いていきます。新しい感じの探偵小説だと思います。
ただほんの書評
とにかく、長い小説です。全577ページあります。ながい!
そして、新しい!
ただほんが面白いと思ったところは、
①やはり、元泥棒が探偵という斬新(ざんしん)な設定です。
探偵って、勝手なイメージですが、押し付けがましいと言うか、上からな感じがあるように思うのです。
「あなたが犯人です!」
なんて、自分が正解で正しいみたいな、上から見下されているかのようです。
まあ、それが良かったりするのですが…。
御手洗潔(占星術殺人事件の)も「はあ、こんな事も分からないの!」なんて言いそうですし、とにかく正義の方に立っていますから、正しいですね。
でも、蓮野は、元泥棒で正義の側ではないですし、犯罪を犯した人のことも分かっているように見えます。
そして、芯があるのです。
②最後の結論の部分がすっきりしている。
村山鼓堂博士殺害、書生・宮尾殺害や、襲撃事件など全ての事件の真相がはっきりして解き明かされます。
スッキリした内容でした。
それぞれの容疑者に物語があり、それが絡み合っていたのでほぐしていきます。
③ワトスン・井口の活躍。
なかなか、活躍していますね。
蓮野が家からほぼ出ないので、井口がほとんど足を運び調べています。忍び込んだり、嘘ついたり。
今一つだったところは、
・途中、誰が話しているのか分からなくなりました。
一番分からなくなったのは、井口の姪・峯子(みねこ)と叔父のところ。叔父とは井口のことだと思うのですが、叔父、井口と両方出てくるので、井口の叔父?ってなってしまいました。
叔父は昨日千葉に出向いたとかで、蓮野に報告しなくてはならないことがあるというから都合がよい。井口には今年の一月に蓮野と一緒に誘拐された峯子を救い出した実績があったので、
本文より
というふうに、叔父、井口と、同じ文の中で出てくるので?ってなってしましました。
『方舟』とはぜんぜん違うミステリですが、あらためて『方舟』ってすごいよく出来た小説なんだなぁって思いました。
これ、シリーズ物なので続き読んじゃうなぁ!
コメント